2009-08-21

思いもよらない出会い。

書き忘れていたことがあったので、フランスのことをひとつ。

Paris を出る前日、行きたいところを詰め込んで大忙しのスケジュールの中、
どうしても行きたくなってしまった場所が、郊外にあった。
他の人にとってはなんでもない場所。
でもなにやら気になって、自分の目で確かめたかった場所。


発端は、アリーグルの蚤の市で偶然手に取った、古びたキーホルダーだった。
ヒヒヒと笑う、悪そうなシェフと、まな板の上の鯉、ならぬ、
今まさにオーブンに運ばれんとする、トレイの上の鳥。
表面のデザインに惹かれて、ちょっといいなと思ったので、裏面を見た。
そこには、「la maison du couscous」という店名と、パリ郊外の住所。
あ、フランスのキーホルダーなんだな、と、買って帰った。
いつのものなのかは、聞かなかった。
でも、家に帰って、ふと「どのあたりにあったんだろう?」と思って、
なんとなくgoogle map で住所をひいたら、
住所が存在する、ということにとどまらず、
このレストラン自体が、現存していることがわかった。

もし仮に、つい最近作られたばかりのキーホルダーだったとしても、
レストランが「本当にあった」というこの偶然を捨てるのはもったいない。
とにかく行ってみよう、縁があるなら着くだろう、と、
今思えば無謀にも、地図すら持たずに、メトロを乗り継いで最寄り駅まで行った。

駅の階段をのぼると、
そこはわずかにParisを出た、けれどもう郊外の街だった。
適当にあたりを見回すと、だいたいの通りの名が載っている看板が、
都合良く立っていた。
これ幸いとばかりに、通り名を頼りにしてmaison du couscous を探しつつ歩く。
もし発見できたらラッキーだなぁ、くらいの軽い気持ちだったのがよかったのか、
通りと地番で、偶然にも行けてしまった。


特におしゃれなわけでもない、
やや(だいぶ?)うらぶれた雰囲気のホテルの1階にある、
何の変哲もないレストラン。
ここが、目指していた場所だった。
おまけに、案の定ヴァカンスに入っており、中はがらんどう。
記念に何か食べられるわけでも、お店の人と話ができるわけでもない。
でも、ふらりとここに来て、その存在を確認できたことに意味があったから、
これで、とても、よかった。


ここは観光客などまったく見かけない、いわゆる普通の街。
写真を撮っていたら、地元のおじさんにあきらかに不信な目で見られ始めたので、
すぐはす向かいにパティスリーの看板を見つけたのをいいことに、
中に入ってみた。


看板は可愛い。
でもまぁきっと「街の普通のお菓子屋さん」ってかんじなんだろうなー、
とタカをくくっていたのだけれど。


実際には、ショーケースを埋め尽くしている、
とても綺麗なケーキやタルトたちにほれぼれしてしまった。
どうやら、すぐ奥に見えるキッチンで作っているみたいだ。






キラキラとフルーツが輝いているタルトと迷ったけれど、
お昼どきでおなかがすいていたので、
プロヴァンス風キッシュを買って、次の場所に移動しながら食べた。
美味しそうで、美味しくて、
食べてしまってから、写真を撮り忘れたことに気がついた。
このお店は、キーホルダーがなかったら、絶対に行かなかった郊外の1軒。

私にとって、このキーホルダーは、もう、ただの古いグレーの物体ではなくなった。

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